ファド
「ファド」について、用語の意味などを解説

fado(ポル)
ファドとは、ポルトガルのリスボンで生まれた大衆歌謡。ギターラとギターを伴奏に哀愁に満ちた旋律が歌われる。
ファドの定義と歴史的背景
ファド(Fado)は、ポルトガルを代表する伝統的な民俗歌謡であり、独自の発展を遂げた音楽ジャンルである。その語源はラテン語で「運命」や「宿命」を意味するファトゥム(fatum)に由来するとされている。19世紀前半に首都リスボンの港町や下町の酒場で、船乗りや労働者たちの間で歌われ始めたのが起源である。長い歴史の中で、庶民の哀愁や生活の苦悩を歌う「リスボン・ファド」と、大学の街コインブラで男子学生や知識人を中心に洗練された「コインブラ・ファド」という2つの大きな潮流を生み出した。
音楽的特徴とサウダーデの表現
ファドの根底を流れるのは、ポルトガル語特有の概念である「サウダーデ(saudade)」という感情である。これは、郷愁、哀愁、失われたものへの思慕、あるいは満たされぬ愛といった、切なくも愛おしい複雑な情動を指す。演奏の基本編成は、主役である歌い手(ファディスタ)を中心に、特有のきらびやかな高音を放つ12弦のポルトガル・ギター(ギターラ)と、低音で和音とリズムを支えるクラシック・ギター(ヴィオラ)によって構成される。打楽器を伴わないアコースティックな編成だからこそ、歌い手の情感豊かな声のダイナミクスや即興的なニュアンスがストレートに響き、聴衆の心に深く訴えかける。
現代音楽における展開と世界的な評価
20世紀に入ると、偉大な歌い手であるアマリア・ロドリゲスらの活躍によって世界的な認知を獲得し、2011年にはユネスコの無形文化遺産にも登録された。現代の音楽シーンにおいては、伝統的なアコースティックの枠にとどまらず、チェロやピアノなどのクラシック楽器、あるいは現代的なベースや電子音響、他ジャンルのワールドミュージックの要素を取り入れた新しいスタイルも次々に誕生している。ジャンルを超えて人間の根源的な感情を揺さぶる普遍的な魅力を持っており、現代においても新しい音楽表現のインスピレーション源として重要な存在であり続けている。
「ファドとは」音楽用語としての「ファド」の意味などを解説
Published:2026/04/25 updated:
