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メゾ

Posted by Arsène

「メゾ」について、用語の意味などを解説

メゾ

mezzo(伊)

メゾ=半分くらいの。意味を弱める付加語として用いられる。

「半分」という名の完全なる中心 メゾの語源と哲学

音楽用語のメゾ(mezzo)は、イタリア語で「半分」「中間」「中くらい」を意味する形容詞であり、ラテン語の medius(中央の)に由来する。英語の middle や medium と同語源であるこの言葉は、単独で用いられることは稀で、主に他の用語の前に付くことでその意味を修正・限定する役割(接頭辞的機能)を果たす。

しかし、芸術表現における「メゾ」を、単なる「50%(半分)」という数学的な数値として捉えるのは誤りである。それは「不完全な状態」や「中途半端」を意味するのではなく、両極端(Extremes)の間にある「均衡点(バランス・ポイント)」、あるいは対立する二つの要素を繋ぐ「架け橋」としての重要な領域を指し示している。古代ギリシャのアリストテレスが説いた「中庸(メソテース)」の精神こそが、メゾという言葉の真髄なのである。

「緩和」と「人間化」のフィルター

メゾが最も頻繁に結合するのは強弱記号である(メゾ・フォルテ、メゾ・ピアノ)。ここでメゾが果たしている機能は、強すぎる光や、暗すぎる闇に対して、一種のフィルターをかけることである。

「フォルテ(強い)」という言葉に「メゾ」が付くと、その強さは抑制され、より制御された、人間的な強さへと変容する。「ピアノ(弱い)」に付けば、その弱さは極端な儚さから離れ、日常的な穏やかさを帯びるようになる。つまり、メゾとは、音楽を「神々の領域(極限)」から「人間の領域(等身大)」へと引き戻すための、リアリズムの装置として機能していると言える。

物理的な「中間」の魔力 メゾ・アルコ

弦楽器の奏法において、「アル・メゾ(al mezzo)」あるいは「メゾ・アルコ(mezzo arco)」という指示がある。これは「弓の中央部で」弾くことを意味する。

ヴァイオリンなどの弓において、元(手元)は重くて力が入りやすく、先(先端)は軽くてコントロールが難しい。その中間点である「メゾ」の場所は、重さと軽さ、圧力とスピードのバランスが最も良く取れる「スイートスポット」である。初心者はこの中間を保つことができず、弓が暴れてしまうが、巨匠たちはこの「メゾ」の領域を自在に操ることで、最も安定した美しい音色を生み出す。物理的な意味でも、メゾは「支配と自由」が共存する理想的な場所なのである。

「メディア」としての役割

メゾ(mezzo)という言葉は、英語の「メディア(media / medium)」と深く関係している。メディアとは「媒介するもの」「媒体」を意味する。

音楽において、メゾ・ソプラノがソプラノとアルトの間を取り持ち、メゾ・フォルテがフォルテとピアノの間を繋ぐように、メゾを含む要素はすべて、異なる二つの世界を接続する「媒介者(Mediator)」としての性質を持つ。もし世界に「上と下」「強と弱」「黒と白」しか存在しなければ、そこには断絶しか生まれない。その間に無限のグラデーション(階調)を作り出し、対立する概念を和解させるのがメゾの役割である。

二元論を超えて

私たちは物事を「善か悪か」「勝ちか負けか」といった二元論で判断しがちである。しかし、音楽(そして人生)の豊かさは、そのどちらでもない「間(あわい)」の領域にこそ宿っている。

メゾという言葉が指し示すのは、決定的な結論を急がず、揺れ動くプロセスそのものを愛する姿勢である。熱狂でも冷淡でもない、悲劇でも喜劇でもない。その「中間の状態」に留まり続けることの難しさと、そこからしか見えない景色の美しさを、メゾは私たちに教えてくれる。それは、極端に走ることよりも遥かに知性と精神力を要する、成熟した大人のための美学である。

Category : 音楽用語 め
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「メゾとは」音楽用語としての「メゾ」の意味などを解説

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