モダンジャズ
「モダンジャズ」について、用語の意味などを解説

modern jazz(英)
モダンジャズとは、1940年代半ばに発生したビバップ以降のジャズのスタイルを総称して指す。
モダン・ジャズ以前がダンス音楽として発展したのに対し、それ以降のジャズは鑑賞音楽としての側面を強く持っている。一般的にはフリー・ジャズ、フュージョンなどは含まれない。
定義とパラダイムシフト:踊るための音楽から聴くための芸術へ
モダン・ジャズ(Modern Jazz)とは、広義には1940年代半ばに誕生した「ビバップ(Bebop)」以降のジャズ・スタイルを総称する言葉である。しかし、より厳密な定義においては、1940年代から1960年代にかけて発展したビバップ、ハード・バップ、クール・ジャズ、モード・ジャズなどを指し、その後のフリー・ジャズやフュージョン(エレクトリック・ジャズ)とは区別されることが多い。
モダン・ジャズの最大の歴史的意義は、ジャズという音楽の目的を「ダンスホールの伴奏音楽(機能音楽)」から「コンサートホールやクラブでの鑑賞音楽(芸術音楽)」へと劇的に転換させた点にある。それまでのスウィング・ジャズが大編成のビッグバンドによる、踊りやすく分かりやすいエンターテインメントであったのに対し、モダン・ジャズは少人数のコンボ編成を主体とし、複雑な和声構造と高度な即興演奏(インプロビゼーション)を追求する、知的でストイックな表現形式となった。これは、ミュージシャンがエンターテイナーから「芸術家」へと自己定義を変えた瞬間でもあった。
ビバップ革命:破壊と創造の夜明け
モダン・ジャズの幕開けを告げたのが、アルトサックス奏者のチャーリー・パーカーとトランペット奏者のディジー・ガレスピーらによって1940年代のニューヨーク、ミントンズ・プレイハウスなどで醸成された「ビバップ」である。
彼らは、スウィング・ジャズの予定調和なコード進行に飽き足らず、代理コード(裏コード)やテンション・ノートを極限まで詰め込んだ複雑な和声を即興的に構築した。また、リズムにおいても、バスドラムで4分音符を刻むことをやめ、シンバルレガートでビートをキープしつつ、スネアやバスドラムで予測不可能なアクセント(ボム)を入れるポリリズム的なアプローチを確立した。このあまりに急進的で難解なスタイルは、当時の聴衆や批評家からは「不協和音の羅列」と批判されたが、そのスリリングなスピード感と緊張感は、戦後の若者たちを熱狂させ、ジャズの文法を不可逆的に書き換えたのである。
クールとハード・バップ:東西の対比と黒人性の回帰
1950年代に入ると、ビバップの過激なエネルギーに対する反動として、抑制の効いた知的なスタイルである「クール・ジャズ」が登場する。マイルス・デイヴィスの『クールの誕生』や、西海岸の白人ミュージシャン(ウエストコースト・ジャズ)を中心としたこの動きは、クラシック音楽の対位法や編曲技法を取り入れ、室内楽的なアンサンブルの美しさを提示した。
一方で、東海岸(ニューヨーク)の黒人ミュージシャンたちは、ビバップの熱気を継承しつつ、そこにゴスペルやブルースといった黒人音楽のルーツ(アーシーな感覚)を注入した「ハード・バップ」を確立した。アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズやクリフォード・ブラウンに代表されるこのスタイルは、ビバップよりもテンポを落とし、ファンキーで歌心のあるメロディと、強烈なバックビートを特徴とする。これがモダン・ジャズの黄金時代(ゴールデン・エイジ)を形成し、「ジャズ=ハード・バップ」というパブリックイメージを決定づけた。
モード・ジャズの地平:コード進行からの解放
1950年代末、常に革新の中心にいたマイルス・デイヴィスは、コード進行の細分化が進みすぎて行き詰まっていたハード・バップの状況を打開すべく、「モード・ジャズ(Modal Jazz)」を提唱した。
従来のジャズが、コード(和音)の変化に合わせて音を選んでいく「縦の移動」であったのに対し、モード・ジャズは、一つのモード(旋法/スケール)を長時間維持し、その中で自由にメロディを紡いでいく「横の移動」である。アルバム『Kind of Blue』で完成されたこの手法は、演奏者にコード進行という縛りからの自由を与え、より瞑想的で抽象的な表現を可能にした。これは、後のジョン・コルトレーンらによるスピリチュアルな探求や、エレクトリック・マイルスへの布石となる重要な転換点であった。
現代における「モダン」の意味
「モダン(現代的)」という言葉を冠しながら、現在では「古典(クラシック)」として扱われるというパラドックスを抱えるモダン・ジャズであるが、その精神性は決して古びていない。 ロバート・グラスパーやカマシ・ワシントンといった現代のジャズ・ジャイアントたちは、ヒップホップやR&Bのビート感を取り入れつつも、その即興演奏の根底にはバップやモードの理論を確かに継承している。モダン・ジャズとは、特定の時代のサウンドを指す名詞であると同時に、「常に既存の枠組みを疑い、即興を通じて未知の領域へ踏み出す」という、ジャズ本来のアティチュード(姿勢)を指す動詞的な概念でもあるのだ。
「モダンジャズとは」音楽用語としての「モダンジャズ」の意味などを解説
Published:2025/12/27 updated:
