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リコーダー

Posted by Arsène

「リコーダー」について、用語の意味などを解説

リコーダー

recorder(英)

リコーダーとは、リードを持たない木管楽器の一種。

吹口に設けられた細い通気溝から出る気流が、鋭いエッジに吹きつけられて発音する。ブロックフレーテともいう。

リコーダーはリードを用いない木管楽器であるが、フルートに似た性質の音質を持つ。

音域によるリコーダーの分類

リコーダーにもたくさんの種類があり、それらは音域によって分類される。

リコーダーの種類としては、音域の高いものから、ソプラニーノ、ソプラノ、アルト、テナー、バス、グレート・バス、コントラバスという分類がある。

単純にして至高――リコーダーの真価と誤解

日本では学校教育における導入楽器としてのイメージが先行し、その芸術的な価値が過小評価されがちなリコーダー(recorder)だが、その歴史は深く、バロック時代には「フルート」といえば横笛ではなくリコーダーを指すほどに、王侯貴族やヴィルトゥオーソたちに愛された高貴な楽器である。構造が単純であるがゆえに、演奏者の息遣いが直接音に変換されるという特性を持ち、極めて繊細なアーティキュレーションと純粋な響きを要求される。ここでは、教育用楽器というレッテルを剥がし、古楽の華として君臨したリコーダーの真の姿に迫る。

構造的特徴と発音のメカニズム

リコーダーは、リードを用いず、吹口(ウィンドウェイ)に息を吹き込むだけで発音可能な「内部ダクト式」のフルートに分類される。この構造は、初心者でも容易に音を出せるという利点を持つ一方で、演奏表現においては諸刃の剣となる。モダン・フルートやクラリネットのように、アンブシュア(口の形)で音程や音色を大幅に補正することが難しいため、演奏者は「息の圧力」と「指の微細な操作」のみで音楽を構築しなければならないからである。

特にダイナミクス(強弱)の表現には物理的な制約が伴う。息を強く吹き込めば音量は上がるが同時に音程も上がってしまい、弱く吹けば音程が下がってしまう。したがって、リコーダー奏者は、音程を保ったまま強弱の錯覚を生み出すために、高度なアーティキュレーション(タンギング)や、替え指(オルタナティブ・フィンガリング)による音色変化を駆使する。この制約の中でいかに豊かな表現を生み出すかという点に、リコーダー演奏の奥義があると言える。

ルネサンスからバロックへの黄金時代

リコーダーの歴史は中世にまで遡るが、最初の黄金期はルネサンス時代に訪れた。当時は、異なるサイズの楽器を組み合わせて合奏する「コンソート」という形式が好まれ、リコーダーもソプラノからバスまで多様なサイズが作られた。当時の楽器は円筒形に近い内径を持ち、低音域から高音域まで均質な音色で、アンサンブルにおいて溶け合う響きが重視された。

続くバロック時代(17世紀後半〜18世紀前半)において、リコーダーは独奏楽器としての地位を確立する。オトテール一族などの改良により、内径は円錐形(逆円錐)となり、より倍音豊かで華やかな音色と、高音域での俊敏な運動性を獲得した。この時期、テレマンやヴィヴァルディ、ヘンデル、J.S.バッハといった大作曲家たちが、リコーダー(当時はブロックフレーテやフリュート・ア・ベックと呼ばれた)のために数多くの協奏曲やソナタを残した。特にバッハの『ブランデンブルク協奏曲』第2番や第4番におけるリコーダー・パートは、この楽器が持つ牧歌的な純粋さと、超絶技巧的な可能性の両面を見事に引き出している。

横笛の台頭と一時的な衰退

18世紀半ばを過ぎると、オーケストラの規模拡大と共に、より大きな音量とダイナミックレンジを持つトラヴェルソ(横笛フルート)が台頭し、リコーダーは表舞台から姿を消していく。古典派やロマン派の時代、リコーダーは「過去の遺物」として忘れ去られ、チャカン(Csakan)のような一部の変種を除いて、主要なレパートリーから排除された。ロマン派の感情表現において重視された、劇的なクレッシェンドやデクレッシェンドが構造的に苦手であったことも、衰退の一因と言える。

20世紀の復興と現代の評価

リコーダーが再び脚光を浴びるのは20世紀に入ってからである。アーノルド・ドルメッチらによる古楽復興運動に加え、フランス・ブリュッヘンという不世出の天才の登場が決定的な役割を果たした。ブリュッヘンは、博物館に眠っていた歴史的な名器を徹底的に研究し、当時の奏法(ヒストリカル・プレイスタイル)を現代に蘇らせた。彼の演奏は、リコーダーが決して「稚拙な楽器」ではなく、人間の情念を激しく揺さぶる表現力を持った芸術的な道具であることを世界に証明した。

現代においてリコーダーは、古楽アンサンブルに不可欠な存在であるだけでなく、ベリオや石井眞木といった現代作曲家によって、微分音や重音(マルチフォニック)、特殊奏法を駆使した前衛的な作品も数多く書かれている。教育現場での普及は、この楽器の手軽さを証明するものではあるが、プロフェッショナルな領域におけるリコーダーの世界は、それとは比較にならないほどの深淵さと技巧的な厳しさを秘めている。

「鳥の模倣」としての象徴性

バロック音楽において、リコーダーはしばしば「鳥の鳴き声」や「愛の嘆き」、「死の象徴」として用いられた。その純粋で倍音成分の少ない音色は、地上の俗世間から離れた天上的な響き、あるいはエロティックなまでの無垢さを連想させる。ヘンデルのオペラにおいて、魔女や妖精が登場するシーンでリコーダーが使用されるのは、この楽器が持つ「異界性」への着目であろう。

私たちがリコーダーの演奏に耳を傾けるとき、それは単なるノスタルジーではなく、数百年前の人々が理想とした「汚れなき音」への憧憬と向き合うことでもある。プラスチック製の量産品しか知らないのであれば、一度でよいので、黄楊(ツゲ)や黒檀(コクタン)などの銘木から削り出された本格的な楽器の、温かく芯のある音色を聴いてみてほしい。そこには、私たちが知っている「縦笛」とは全く異なる、高貴で深遠な小宇宙が広がっている。

「リコーダーとは」音楽用語としての「リコーダー」の意味などを解説

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