リード
「リード」について、用語の意味などを解説

reed(英)
リードとは、楽器の発音源になるアシ、木、竹、金属などの薄片。またはリードを用いる楽器。
リードの種類
シングル・リード
1枚のリードが管の内側やマウスピースと触れあって振動するもの。クラリネット、サクソフォンなど。
ダブル・リード
2枚のリードが互いに触れあって振動するもの。オーボエ、ファゴットなど。
フリー・リード
金属製で、それ自体の振動で一定の楽音を発する。オルガン、ハーモニカなど。
「葦」という植物の気まぐれな神秘
音楽用語としての「リード」は、植物学的にはイネ科の「ダンチク(Arundo donax)」という多年草の茎を指す。この植物は主に南フランスのヴァール地方などの地中海沿岸で栽培されており、適切な収穫時期、数年間にわたる乾燥(シーズニング)、そして精密なカッティングを経て楽器のパーツへと加工される。
しかし、天然素材である以上、そこには避けられない「個体差」が存在する。同じ箱に入っているリードでも、繊維の密度、硬さ、左右のバランスは一枚一枚異なる。プロの演奏家であっても、箱から出してすぐに使える「当たり」のリードに出会える確率は決して高くない。この気まぐれな植物片を選定し、微調整し、自分の楽器と唇に馴染ませるプロセスこそが、木管楽器奏者の日常の大部分を占める悩みの種であり、同時に独自の音色(トーン)を追求するための聖域でもある。
ベルヌーイの定理と自励振動
物理学的な視点から見ると、リードの発音原理は「ベルヌーイの定理」によって説明される。奏者が息を吹き込むと、リードとマウスピース(またはリード同士)の隙間を空気が高速で通過する。すると、流速が上がった部分の圧力が下がり、周囲の圧力によってリードが閉じようとする力が働く。
リードが閉じて空気の流れが止まると、弾性によって再び元の位置に戻ろうと開き、再び空気が流れ始める。この「閉じる・開く」という超高速の反復運動(自励振動)が、管内の空気を共振させ、音として放射されるのである。つまり、リードとは単なる振動体ではなく、息(直流エネルギー)を音(交流エネルギー)へと変換するための、極めて精巧な「スイッチング・バルブ」として機能しているのだ。
シングルとダブル:倍音構造の決定的な差異
シングルリード(クラリネット、サックス)とダブルリード(オーボエ、ファゴット)の最大の違いは、音響学的な倍音構造にある。
シングルリードは、硬いマウスピースという固定された壁に対して一枚のリードが振動する構造を持つ。これにより、比較的偶数倍音と奇数倍音がバランスよく含まれた、豊かで柔軟な音色が生成される。一方、ダブルリードは二枚のリードが互いに衝突しながら振動する。この構造は、奇数倍音を強調する傾向があり、その結果、オーボエ特有の鼻にかかったような(Nasal)、鋭く貫通力のある音色が生まれる。この倍音の違いが、オーケストラの中での役割分担(溶け込むか、目立つか)を決定づけている。
フリーリード:共鳴管を持たない自由な魂
ハーモニカ、アコーディオン、そして日本の伝統楽器である笙(しょう)などで使われる「フリーリード(自由簧)」は、管楽器のリードとは一線を画す。これらは金属製の枠(プレート)の中に、わずかに小さい金属片が固定されており、空気が通ることでその隙間を行き来して振動する。
最大の特徴は、管(共鳴体)の長さに依存せず、リード自体の長さと重さによって音程が決定される点である(笙などは管の共鳴を利用するが、リード自体が音程を持つ)。このため、吸っても吐いても音が出る構造(ハーモニカなど)が可能となり、また複数の音を同時に鳴らす和音演奏にも適している。フリーリードの音色は、金属的で倍音が豊かであり、人間の声に近い哀愁を帯びることが多い。
「プラスチック」の進化と未来
近年、天然ケーンの不安定さを解消するために、プラスチックや炭素繊維(カーボンファイバー)などの合成素材(シンセティック・リード)が急速に進化している。これらは湿度の影響を受けず、耐久性が高く、品質が均一であるという圧倒的なメリットを持つ。
かつては「音が硬い」「表現力に欠ける」と敬遠されがちだったが、最新の技術ではケーンの繊維構造をミクロ単位で模倣することで、天然素材に肉薄する吹奏感と音色を実現している。特に、持ち替えの多いミュージカル奏者や、過酷な環境(野外演奏など)では、シンセティック・リードがファーストチョイスになりつつある。しかし、それでもなお多くのクラシック奏者が天然ケーンにこだわり続けるのは、植物繊維だけが持つ、水分を含んだ時の独特の「温かみ」や「複雑な雑味」が、音楽表現の深淵に不可欠だと感じているからだろう。
「リードとは」音楽用語としての「リード」の意味などを解説
Published:2025/12/27 updated:
