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ライト・ハンド奏法

Posted by Arsène

「ライト・ハンド奏法」について、用語の意味などを解説

ライト・ハンド奏法

right hand playing(英)

ライト・ハンド奏法は、ギター、ベースの奏法のひとつ。

右手の指でハンマリング・オン、プリング・オフのテクニックを行う。

ライト・ハンド奏法は、右手でピッキングせずにフィンガーボードに指を叩き付けるという、タッピングをする事で音を出す。

左手指のハンマリングやプリング、チョーキング、トレモロ・アームなどと併用したり、複数の右手指を使う事で多種多様なスピーディーなフレーズを演奏する事が可能。特にロック系のギタリストが好んで使っている。

定義と呼称の混迷:「ライト」か「ライト」か

ライト・ハンド奏法(Right Hand Playing)とは、エレクトリック・ギターやベースにおいて、通常はピックを持って弦を弾く役割を持つ「右手(Right Hand)」を、指板上の弦を叩きつける(ハンマリング)および引っ掻く(プリング)ために使用する奏法である。世界的には「タッピング奏法(Tapping)」という呼称が一般的であるが、日本では1970年代後半の普及期に、ヴァン・ヘイレンの革命的な登場とともに「ライト・ハンド(右手の)・テクニック」という言葉が誤って「ライト(Light)・ハンド(軽やかな手)」と混同され、あるいは単に「Right Hand」のカタカナ表記として定着した経緯がある。

この奏法の最大の発明は、左手だけでは物理的に届かない広い音程(インターバル)を、右手を「第三の手」として介入させることで容易に跳躍可能にした点にある。これにより、鍵盤楽器のような広音域のアルペジオや、流麗なレガート・フレーズをギターで再現することが可能となった。

エディ・ヴァン・ヘイレンによる革命と普及

歴史的に見れば、指板を右手で叩くというアイデア自体は、ロイ・スメックやスティーヴ・ハケット(ジェネシス)などが既に実践していた。しかし、この奏法をロック・ギターの必須科目へと昇華させたのは、間違いなくエディ・ヴァン・ヘイレンの功績である。彼のインストゥルメンタル曲『Eruption(暗闇の爆撃)』で披露された高速の三連符フレーズは、世界中のギタリストに衝撃を与えた。

エディのスタイルは、人差し指(または中指)で指板を叩く(Tap)、左手薬指で弦を弾く(Pull)、左手人差し指で押弦する(Hammer)という3つの動作を1セットとし、これを高速で回転させるものである。特に、トライアド(三和音)の構成音をこの3点で担当させることで、歪んだギターサウンドでありながら、シンセサイザーのシーケンス・フレーズのような機械的かつ美しい分散和音を生み出した。これは単なる「早弾きのトリック」ではなく、ギターという楽器の和声的な可能性を拡張した音楽的な発明であった。

メカニズムの進化:ポリフォニーとパーカッシブへの道

ライト・ハンド奏法は、単音のラインを弾くだけにとどまらず、より複雑な進化を遂げている。その極北に位置するのが、スタンリー・ジョーダンに代表される「タッチ・スタイル」である。彼は両手の指をピアノのハンマーのように使い、左手で伴奏(コードやベースライン)を、右手でメロディを同時に演奏することで、ギター一本で完全なポリフォニー(多声演奏)を実現した。ここでは、ギターはもはや撥弦楽器ではなく、打鍵楽器に近いアプローチで扱われる。

また、現代のマスロックやアコースティック・ギターの分野では、押弦による音程変化だけでなく、弦を叩く衝撃音(パーカッシブ音)をリズムとして取り入れたスタイルが主流となっている。日本のギタリスト、押尾コータローやMIYAVIなどは、弦をスラップし、ボディを叩き、同時に実音をタッピングすることで、ドラムとベースとギターが一体化したようなワンマン・バンド的なサウンドを構築している。

ベースにおける応用と機能拡張

この奏法はギタリストだけの専売特許ではない。ベーシストにとっても、ライト・ハンド奏法は表現の幅を広げる重要な武器である。ビリー・シーンやヴィクター・ウーテンといった超絶技巧派ベーシストたちは、太いベース弦をタッピングすることで、ピアノの低音部のような重厚かつ高速なフレーズを奏でる。

ベースにおけるタッピングは、リズムの隙間を埋めるゴーストノートとしての役割や、ドラムとユニゾンするパーカッシブな機能、さらにはコード弾きが困難なベースにおいて和音感を演出するための手段として重宝される。特に、左手でルート音を持続させながら、右手で高音域のメロディやオブリガートを加える手法は、ベースという楽器を「単なるルート弾き」から「ソロ楽器」へと解放する上で決定的な役割を果たしたと言えるだろう。

「ライト・ハンド奏法とは」音楽用語としての「ライト・ハンド奏法」の意味などを解説

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