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音楽用語集 音楽用語辞典

リム

Posted by Arsène

「リム」について、用語の意味などを解説

リム

rim(英)

リムとは、ドラムのヘッドをシェルに押さえるための金属製の枠。

材質により音色も異なるが、スティール、ダイキャスト、木製(バス・ドラム用でフープとも呼ぶ)などがある。

ドラムヘッド Drum head(宇佐丸白書)

ドラムチューニング(drum tuning)(宇佐丸白書)

シェル(shell)(宇佐丸白書)

リムショット

円環の支配者:ドラムサウンドの輪郭を決定づける「リム」の音響学

リム(Rim)、あるいはフープ(Hoop)とは、ドラムヘッド(皮)をシェル(胴)に固定し、テンションボルトの張力を均一に伝えるための枠である。しかし、この部品を単なる「皮を留めるための金具」として認識することは、ドラムという楽器の本質を決定的に見誤ることに等しい。ヴァイオリンにおける駒(ブリッジ)やギターにおけるナット、あるいはサドルと同様に、リムは振動の伝達経路の最前線に位置し、ドラムの音色(トーンキャラクター)、サステインの長さ、そしてアタックの質感を物理的に整形する「第二のシェル」とも呼ぶべき、極めて重要な振動体であるからだ。

製造法と材質がもたらす音響的二律背反

現代のドラムセット、特にスネアドラムやタムタムにおいて主流となっているリムは、大きく分けて「プレスフープ」と「ダイキャストフープ」の二種類に分類される。これらは製造工程が異なるだけでなく、対照的な物理特性と音響効果を楽器にもたらす。

プレスフープ(フランジフープ)は、金属の板をプレス機で曲げて成形したものである。物理的に軽量であり、適度な弾力と柔軟性を持つことが最大の特徴だ。この柔軟性は、ヘッドの振動を過度に拘束せず、シェル全体の鳴りを素直に引き出す能力に長けている。スティックで叩いた瞬間、リム自体もわずかにたわんで共振するため、音には空気感のある広がり(オープンさ)と豊かな倍音が含まれ、サステインも長く、減衰は緩やかになる傾向がある。1.6mm、2.3mmといった金属板の厚さの違いによっても特性は変化し、薄ければより軽快でオープンに、厚ければよりまとまりのある音になる。ヴィンテージドラムの多くはこのタイプであり、ジャズや歌モノのポップスなど、繊細なニュアンスや空間の響きを重視するジャンルで愛用され続けている。

対してダイキャストフープは、溶かした金属(亜鉛合金やアルミニウムなど)を精密な金型に流し込んで成形したものである。継ぎ目がなく、極めて高い剛性と質量を持つ。この「重くて硬い」枠でヘッドを強力に抑え込むことにより、不要な倍音成分が物理的にカット(整理)され、基音(ファンダメンタル)が強調されたタイトで芯のあるサウンドとなる。音の立ち上がり(アタック)は鋭く速くなり、大音量のアンサンブルでも埋もれない輪郭の明瞭さ(フォーカス)を獲得できる。また、フープ自体が変形しにくいためチューニングの安定性が高く、リムショットをした際の音圧も桁違いに強力である。そのため、ロック、フュージョン、メタルといった、音の分離とパワーが求められるジャンルのドラマーから絶大な支持を得ている。

形状の変遷と「スティックセイバー」の思想

フープの断面形状にも、歴史的な進化とメーカーの音響的な意図が隠されている。現在最も一般的に普及している「トリプルフランジ・フープ」は、上端が外側に折り返されている形状を持つ。これはスティックが当たった際のダメージを軽減し、リムショットの接触面積を確保しつつ、倍音を適度に拡散させるための合理的な設計である。

一方で、ヴィンテージのSlingerlandや一部のGretschに見られる「内巻き(インワード)フープ」や「スティックセイバー・フープ」は、その名の通り上端が内側に丸め込まれている。この形状により、スティックへの当たり(打感)は柔らかくなり、音色は適度にタイトで引き締まりつつ、独特の甘く太いサステインを持つようになる。 さらに歴史を遡れば、1920年代以前のドラムに見られる「シングルフランジ・フープ」が存在する。これは折り返しのない単なる金属の輪で、フック(爪)を介してボルトでシェルに引っ張る構造である。剛性が低いためチューニングの均一性を保つのは難しいが、ヘッドの振動を全く殺さないため、現代のドラムでは得られない、極めてオープンで野性味のある「暴れる」鳴りが得られる。この固有のキャラクターを求め、現代でも一部のネオ・ヴィンテージ系スネアで採用されることがある。

ウッドフープという有機的な選択肢

金属製が主流の中で、メイプルなどの木材を積層して作られた「ウッドフープ」も、独自の音響的地位を確立している。最大の特徴は、金属特有の高周波の倍音(金属的なリンギング)が一切含まれないことである。これにより、スネアドラムはあたかも深みのあるタムのような、温かくふくよかな響きへと変貌する。

特筆すべきはクロススティック(クローズド・リムショット)の音色である。金属リムの「カツッ」という硬質で鋭い音に対し、ウッドフープは「コッ」「ポッ」という、木魚やクラベスを思わせる有機的で太いクリック音を奏でる。アコースティックなアンサンブルや、静謐なバラードにおいて、この音色は楽曲に温もりと深みを与える不可欠な要素となる。ただし、構造上、激しいオープン・リムショットに対する耐久性は金属に劣るため、扱いには繊細さとコントロールが求められる。

メンテナンスと「真円」への回帰

ドラマーが見落としがちなのが、リムのコンディション管理である。特にスチール製のプレスフープは、長年の強力なリムショットの衝撃や、不均一なボルトの締め込みによって、肉眼では確認できないレベルで歪んでいることが多い。リムが真円でなくなり、水平な平坦性(フラットネス)が失われると、どれだけ高価なシェルやヘッドを使っても、物理的に均一なテンションを掛けることは不可能となり、チューニングは永遠に決まらない。

定期的にヘッドを外し、ガラス板のような完全に平らなテーブルの上にリムを置いて、ガタつきや浮きがないか確認すること。そして汗や湿気による錆やビッツ(腐食)を防ぐための清掃を行うこと。これらの地味な作業は、単に楽器を美しく保つためだけでなく、そのドラムが持つ本来のポテンシャル(設計された響き)を取り戻すための、極めて実践的な音響工学的処置なのである。リムとは、ドラムという円環状の楽器において、物理法則と音楽表現が交差する、最も繊細で強靭な境界線である。

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「リムとは」音楽用語としての「リム」の意味などを解説

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