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リムショット

Posted by Arsène

「リムショット」について、用語の意味などを解説

リムショット

rim shot(英)

リムショット(rim shot)は、ドラムのスティッキング、スティックワークのひとつ。

ドラムのリム部分を叩くスティックワーク。

リムショットのパターン

オープン

1本のスティックでリムとヘッドを同時に叩き、「カーン」という音がする。

クローズド

1本のスティックでリムだけを叩き、「コッ、コッ」という音がする。また、クロス・スティックともいう。

打撃の複合化による音響的拡張

リムショット(Rim Shot)とは、スネアドラムなどの打楽器において、打面(ヘッド)と枠(リム/フープ)を同時に、あるいはリムのみを意図的に打撃する奏法の総称である。通常、ドラムという楽器はヘッドを振動させて音を出すものであるが、リムショットはそこに金属製(あるいは木製)のフープそのものの振動衝撃音を加えることで、単一の飛膜振動では得られない複雑かつ高周波の倍音成分を生成する。

音響工学的に見れば、通常のショットが「膜の振動」を主体とするのに対し、リムショットは「膜と剛体の複合振動」であると言える。スティックがリムに当たる瞬間の「カッ」という鋭いアタック音(トランジェント)が、ヘッドの鳴りと融合することで、聴覚上の音圧感(ラウドネス)と輪郭の明瞭度を劇的に向上させる。これは、大音量のアンサンブルの中でドラムの音を埋もれさせないための、物理的な工夫から生まれた知恵である。

「オープン」と「クローズド」の決定的相違

リムショットは、その奏法と得られる効果によって明確に二つのカテゴリーに分類される。両者は同じ「リムを使う」という共通点を持つが、音楽的な機能は対照的である。

第一に、オープン・リムショット(Open Rim Shot)である。これはスティックのショルダー(肩)部分でリムを叩くと同時に、チップ(先端)でヘッドの中央付近を叩く奏法である。一般的にロックやポップスのバックビート(2拍4拍)で聴かれる「カーン!」「パーン!」という抜けの良い炸裂音はこれに該当する。スティックの角度や振り下ろす速度が正確に同期しなければ美しい音は鳴らず、浅く入れば金属音が強すぎて細くなり、深く入りすぎれば音が詰まる。この「スイートスポット」を瞬時に捉える技術こそが、ドラマーの力量を測る一つの指標となる。

第二に、クローズド・リムショット(Closed Rim Shot)である。別名「クロス・スティック(Cross Stick)」とも呼ばれる。これはスティックのチップ側をヘッドの上に置き、掌底の一部をヘッドに触れてミュートしつつ、スティックを回転軸のようにしてグリップ側(バット)でリムを叩く奏法である。「カッ」「コツ」という、まるでウッドブロックやクラベスのような硬質で乾燥したクリック音を生み出す。バラードの静かなヴァースや、ボサノヴァなどのラテン音楽において、ドラムセット的な大音量を抑制しつつ、リズムの骨格を維持するために多用される。

音色の可変性とスティックの入射角

オープン・リムショットの真骨頂は、スティックがリムに当たる位置とヘッドに当たる位置の関係性(入射角)を変えることで、無限のトーンバリエーションを生み出せる点にある。

浅いリムショット(リムの端の方を叩く)は、高次倍音が強調され、サステインの長い、煌びやかで軽いサウンドとなる。これはジャズのコンピング(伴奏)や、繊細なゴーストノートのアクセントとして有効である。対して、深いリムショット(スティック全体を叩きつけるように打つ)は、基音(ファンダメンタル)の太さとアタックの衝撃が最大化され、中低域の充実した「太い」サウンドとなる。ハードロックやヘヴィメタルにおいて求められるのは主にこのサウンドであり、エンジニアがコンプレッサーを掛ける際にも、この入力レベルの高さが音作りの起点となる。

フープの材質と「鳴り」の相関関係

リムショットの音色は、叩かれる側のフープの材質や形状にも強く依存する。 一般的な「プレス・フープ(フランジ・フープ)」は、金属板を曲げて成形されているため適度な柔軟性があり、リムショットをした際に「バシャン」という開放的で広がりのある音がする。倍音は豊かで、ヴィンテージな温かみを感じさせる。

一方、「ダイキャスト・フープ」は溶かした金属を型に流し込んで成形するため、重量があり剛性が極めて高い。これでリムショットを行うと、「ガッ」という短くタイトで、芯の通った攻撃的な音がする。音の減衰が早いため、現代的なテクニカルな演奏や、音像を明確にしたいレコーディング現場では好まれる傾向にある。また、木製の「ウッド・フープ」を用いた場合は、金属的なキンキンした成分が排除され、温かく有機的な「コッ」という響きが得られるため、アコースティックな編成やクラシック音楽で重宝される。

ジャンル特有の用法と身体的代償

音楽ジャンルによって、リムショットの「標準」は異なる。 レゲエにおいては、スネアドラムのチューニングを極限まで高く(ハイピッチ)設定し、クローズド・リムショットのような乾いた音色を、オープン・リムショットの強打で出すという独特のアプローチが取られる。これは「ティンバレス」のようなラテンパーカッションの音色をドラムセットで再現しようとした歴史的背景に由来する。

ジャズにおいては、意図的に不規則なタイミングでリムショットを織り交ぜることで、ソリストとの対話を盛り上げる「合いの手」として機能する。ここでは音量よりも、音色の急激な変化によるサプライズが重視される。

しかし、リムショットの多用は代償を伴う。スティックの側面はリムとの衝突によって削れ、「ささくれ」が激しく発生し、消耗は劇的に早まる。また、手首や肘への衝撃(キックバック)もヘッドのみを叩く場合に比べて遥かに大きいため、腱鞘炎などの障害リスクも高まる。さらに、強烈なリムショットは金属製のフープさえも歪ませる力を持つ。それでもなお、ドラマーたちがリムショットを打ち続けるのは、その「音」がバンドアンサンブルに命を吹き込み、聴衆の心臓を直接叩くような原始的な快感を与える唯一無二の方法だからに他ならない。

「リムショットとは」音楽用語としての「リムショット」の意味などを解説

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