リュート属
「リュート属」について、用語の意味などを解説

lute(英)
リュート属とは、弦鳴楽器のうち、共鳴胴に棹(ネック)が付けられ、その棹の上に弦が張られた楽器である。弦は胴と棹にほぼ平行に張られる。棹上の弦を押さえることで、弦の長さを変えて音高を調整できる構造を持つ。棹にフレットを持つものと持たないものがある。弦鳴楽器の中の楽器の形状の分類のため、撥弦楽器、擦弦楽器ともにリュート属の楽器がある。
撥弦楽器としてはギターやベース、三味線などがリュート属である。
分類学上の「リュート属」:ギターもヴァイオリンも兄弟
楽器分類学(ザックス=ホルンボステル分類)において、「リュート属(Lutes)」という言葉は、狭義の「ルネサンス・リュート」を指すだけではない。定義上は「共鳴胴と、それと一体化した、あるいは接合された棹(ネック)を持ち、弦が棹と並行に張られている弦楽器」の総称である。
この定義に従えば、現代のギターやベースはもちろん、弓で弾くヴァイオリン属、インドのシタール、中国の琵琶、日本の三味線に至るまで、すべてが広義の「リュート属」に含まれる。これらはすべて、ハープ属(弦が共鳴板から垂直に立つ)やツィター属(棹を持たず、板の上に弦を張る)とは根本的に異なる、「棹(ネック)を持って音程を変える」という革命的な構造を共有している。つまり、リュート属の発明こそが、人類が「旋律を歌うように奏でる」ための最大の技術革新であったと言える。
「木」から生まれた王:ウードからの変容
西洋音楽における狭義のリュートの直接的な祖先は、アラブ世界の「ウード(Oud)」である。アラビア語で「木」や「細木」を意味する「al-ʿūd(アル・ウード)」が、スペイン(アンダルシア)やシチリアを経由してヨーロッパに伝わり、「El laúd(エル・ラウド)」を経て「Lute」となった。
しかし、ヨーロッパへの定着過程で決定的な変化が生じた。ウードがフレットを持たず、ピック(撥)で単旋律を装飾的に弾く楽器であったのに対し、リュートはガット(羊腸)製のフレットをネックに巻き付け、指で複数の弦を同時につま弾く奏法へと進化した。これにより、リュートは単なる旋律楽器から、複雑な多声部音楽(ポリフォニー)を一台で完結できる「和声楽器」へと生まれ変わり、ルネサンス期において「楽器の王」としての地位を不動のものとしたのである。
半梨型の小宇宙と「ローズ」の幾何学
全盛期のリュートは、楽器製作技術の頂点を示す工芸品でもあった。その最大の特徴は、薄い木片(リブ)を張り合わせて作られた、美しく膨らんだ「半梨型」の背面(ボウル)である。この形状は、軽量でありながら強度を保ち、内部で音を複雑に反射させて、繊細で銀鈴のような音色を生み出す。
また、サウンドホールには穴が開いているのではなく、表面板を透かし彫りにした精緻な「ローズ(Rosette)」と呼ばれる装飾が施されていた。アラベスク模様や幾何学模様が刻まれたこの装飾は、単なる通気口ではなく、ゴシック建築のバラ窓のように、楽器の中に小宇宙や調和の秩序が宿っていることを象徴していた。弦は通常「コース」と呼ばれる複弦(2本1組)で張られ、独特のコーラス効果と豊かな倍音を生み出している。
タブラチュア譜:現代ギターへの遺産
リュート奏者が残した最大の遺産の一つが、「タブラチュア(Tablature)」という記譜法である。当時の鍵盤楽器や声楽が五線譜(または計量記譜法)を使用していたのに対し、リュート奏者は「音の高さ」ではなく「指を押さえる場所」を視覚的に示した譜面を使用した。
フランス式、イタリア式、ドイツ式など様々な流派が存在したが、基本原理は現代のギターで使用される「TAB譜」と全く同じである。この合理的かつ実践的なシステムのおかげで、当時のアマチュア愛好家たちは複雑な音楽理論を学ばずとも、記号通りに指を置くだけで高度なポリフォニーを楽しむことができた。リュートが王侯貴族から市民階級まで爆発的に普及した背景には、この「ユーザーフレンドリーなインターフェース」の存在があったのである。
テオルボへの巨大化と衰退、そして復興
バロック時代に入ると、通奏低音の需要に応えるために、リュートは低音域を拡張する必要に迫られた。その結果、ネックを延長して長い低音弦を追加した「テオルボ(Theorbo)」や「キタローネ」といった巨大な変種が生まれた。これらは2メートル近い全長を持ち、オーケストラの中でも埋もれない強力な低音を提供した。
しかし、あまりに複雑化・巨大化した楽器は、より扱いやすく大音量が出るチェンバロや、後のピアノの台頭によって徐々に姿を消していく。18世紀末には一度歴史の表舞台から完全に退場したが、20世紀後半の古楽復興運動(アーリー・ミュージック・リバイバル)によって、その繊細な美しさが再評価された。現代においてリュートは、ダウランドやバッハの音楽を「当時の響き」で再現するための不可欠なツールとして、再び静かな輝きを放っている。
「リュート属とは」音楽用語としての「リュート属」の意味などを解説
Published:2025/12/27 updated:
