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リズム・セクション

Posted by Arsène

「リズム・セクション」について、用語の意味などを解説

リズム・セクション

rhythm section(英)

リズム・セクション(rhythm section)とは、リズム面での演奏を主として行う楽器群の総称。

基本的には3リズムかリズムでドラムス、ベース、ギター、キーボード(鍵盤楽器)などがその中心となり、場合によってパーカッションなどが加えられる。主としてはベースとドラム。日本では「リズム隊」と呼ばれている。

定義と構成:音楽を駆動させるエンジンの正体

リズム・セクション(Rhythm Section)とは、バンドやオーケストラといったアンサンブルにおいて、楽曲のリズム(律動)とハーモニー(和声)の土台を提供し、ソリストやボーカリストが自由に表現するための「プラットフォーム」を構築する楽器群の総称である。日本では「リズム隊」という呼称で親しまれているが、これは単に打楽器奏者を指す言葉ではない。

その標準的な構成は、ジャズのピアノトリオやロックバンドの編成に見られるように、「ドラムス」「ベース」、そして「コード楽器(ピアノ、ギターなど)」の三者によって成立する。この三者は、それぞれが「時間(タイム)」「低音(ボトム)」「和音(カラー)」という異なる機能を担いながら、有機的に絡み合うことで、単なる伴奏を超えた一つの巨大な推進装置(グルーヴ・マシン)として機能する。ビッグバンドにおいては、ブラスセクション(ラッパ隊)やリードセクション(サックス隊)に対置される概念として、リズムセクションはバンド全体の心臓部として位置づけられる。

構造的二元論:リズムとハーモニーの架け橋

リズム・セクションの役割を解剖すると、そこには「垂直方向の積み重ね(和声)」と「水平方向の流れ(時間)」を統合する高度な連携が見えてくる。

ドラムスは、純粋な打撃音によって時間を分割し、ビートの骨格を提示する。一方、コード楽器(ピアノやギター)は、和音によって楽曲の色調や緊張感を決定する。この、本来は水と油のような関係にある「打撃」と「和音」を接着するのが、ベースの役割である。 ベーシストは、ドラムのキック(バスドラム)と同期してリズムを刻みつつ、コード楽器が示す和音の根音(ルート)や経過音を弾くことで、リズムをメロディへと翻訳する。この三者が完全に噛み合った瞬間、いわゆる「ポケットに入る(Lock in)」状態が生まれ、聴衆は無意識に身体を揺らし始める。リズム・セクションの質とは、個々の技術よりも、この三者間の「接着強度」によって決まると言っても過言ではない。

歴史的変遷:チューバからエレクトリック・ベースへ

リズム・セクションの形態は、ポピュラー音楽の進化とともに劇的な変貌を遂げてきた。1920年代の初期ジャズ(ディキシーランドなど)においては、ドラムセットはまだ原始的であり、低音部はチューバ(スーザフォン)、コード楽器はバンジョーが担当していた。これは、当時の録音技術やストリートでの演奏環境において、電気を使わずに大きな音を出すための物理的な最適解であった。

1930年代以降、スウィング・ジャズの時代に入ると、ウッドベース(コントラバス)とアコースティック・ギター、ピアノによる「4ビート」スタイルが確立される。フレディ・グリーン(カウント・ベイシー楽団のギタリスト)に代表される、ソロを弾かずにひたすら4分音符で和音を刻み続けるギタープレイは、ドラムのハイハットと共にリズムの推進力を生む「エンジン」として機能した。 そして1950年代、エレクトリック・ベースとエレクトリック・ギター、そして大音量のドラムセットが登場することで、ロックの「8ビート」スタイルが誕生する。ここでは繊細なスウィング感よりも、電気的な増幅による音圧と、直線的なドライブ感が重視されるようになり、リズム・セクションは「ビートを刻むもの」から「ビートを叩きつけるもの」へとその性質を変化させた。

コンピングという対話術

リズム・セクションにおけるコード楽器(ピアノ、ギター)の重要な役割として、「コンピング(Comping)」が挙げられる。これはAccompany(伴奏)やComplement(補完)に由来する言葉で、ソリストの旋律に対して、即興的に和音やリズムを入れる行為を指す。

優れたコンピングは、単にコードを弾くだけではない。ソリストが息継ぎをする瞬間に合いの手を入れたり、ソリストが盛り上がろうとする瞬間に不協和音をぶつけて緊張感を高めたりと、常に主役との対話(インタープレイ)を行う。ピアニストのビル・エヴァンスやハービー・ハンコックは、リズム・セクションという枠組みの中で、ソリストと対等に渡り合う高度なコンピング技術を確立し、リズム隊を「伴奏者」から「共演者」へと昇華させた。

現代における解体と再構築

21世紀の音楽制作(DTM)において、リズム・セクションの概念は物理的な制約から解放された。ドラム、ベース、ピアノの全てを一人のトラックメイカーが打ち込みで構築することも可能であり、ヒップホップやEDMでは、サンプリングされたドラムループとシンセベースがその役割を担う。

しかし、人間が演奏するリズム・セクションが持つ「揺らぎ」や「阿吽の呼吸」の価値が失われたわけではない。むしろ、ディアンジェロやロバート・グラスパーといった現代のアーティストたちは、グリッドに縛られたデジタルビートに対抗するように、極端にレイドバック(後ノリ)した人間的なグルーヴを再評価し、新しい形のリズム・セクション像を提示している。 どれだけテクノロジーが進化しようとも、低音と打撃と和音が絡み合い、時間をデザインするというリズム・セクションの本質的な機能は、音楽が存在する限り不変のエンジンであり続けるだろう。

リズム・セクション

定義と構成:音楽を駆動させるエンジンの正体

リズム・セクション(Rhythm Section)とは、バンドやオーケストラといったアンサンブルにおいて、楽曲のリズム(律動)とハーモニー(和声)の土台を提供し、ソリストやボーカリストが自由に表現するための「プラットフォーム」を構築する楽器群の総称である。日本では「リズム隊」という呼称で親しまれているが、これは単に打楽器奏者を指す言葉ではない。

その標準的な構成は、ジャズのピアノトリオやロックバンドの編成に見られるように、「ドラムス」「ベース」、そして「コード楽器(ピアノ、ギターなど)」の三者によって成立する。この三者は、それぞれが「時間(タイム)」「低音(ボトム)」「和音(カラー)」という異なる機能を担いながら、有機的に絡み合うことで、単なる伴奏を超えた一つの巨大な推進装置(グルーヴ・マシン)として機能する。ビッグバンドにおいては、ブラスセクション(ラッパ隊)やリードセクション(サックス隊)に対置される概念として、リズムセクションはバンド全体の心臓部として位置づけられる。

構造的二元論:リズムとハーモニーの架け橋

リズム・セクションの役割を解剖すると、そこには「垂直方向の積み重ね(和声)」と「水平方向の流れ(時間)」を統合する高度な連携が見えてくる。

ドラムスは、純粋な打撃音によって時間を分割し、ビートの骨格を提示する。一方、コード楽器(ピアノやギター)は、和音によって楽曲の色調や緊張感を決定する。この、本来は水と油のような関係にある「打撃」と「和音」を接着するのが、ベースの役割である。 ベーシストは、ドラムのキック(バスドラム)と同期してリズムを刻みつつ、コード楽器が示す和音の根音(ルート)や経過音を弾くことで、リズムをメロディへと翻訳する。この三者が完全に噛み合った瞬間、いわゆる「ポケットに入る(Lock in)」状態が生まれ、聴衆は無意識に身体を揺らし始める。リズム・セクションの質とは、個々の技術よりも、この三者間の「接着強度」によって決まると言っても過言ではない。

歴史的変遷:チューバからエレクトリック・ベースへ

リズム・セクションの形態は、ポピュラー音楽の進化とともに劇的な変貌を遂げてきた。1920年代の初期ジャズ(ディキシーランドなど)においては、ドラムセットはまだ原始的であり、低音部はチューバ(スーザフォン)、コード楽器はバンジョーが担当していた。これは、当時の録音技術やストリートでの演奏環境において、電気を使わずに大きな音を出すための物理的な最適解であった。

1930年代以降、スウィング・ジャズの時代に入ると、ウッドベース(コントラバス)とアコースティック・ギター、ピアノによる「4ビート」スタイルが確立される。フレディ・グリーン(カウント・ベイシー楽団のギタリスト)に代表される、ソロを弾かずにひたすら4分音符で和音を刻み続けるギタープレイは、ドラムのハイハットと共にリズムの推進力を生む「エンジン」として機能した。 そして1950年代、エレクトリック・ベースとエレクトリック・ギター、そして大音量のドラムセットが登場することで、ロックの「8ビート」スタイルが誕生する。ここでは繊細なスウィング感よりも、電気的な増幅による音圧と、直線的なドライブ感が重視されるようになり、リズム・セクションは「ビートを刻むもの」から「ビートを叩きつけるもの」へとその性質を変化させた。

コンピングという対話術

リズム・セクションにおけるコード楽器(ピアノ、ギター)の重要な役割として、「コンピング(Comping)」が挙げられる。これはAccompany(伴奏)やComplement(補完)に由来する言葉で、ソリストの旋律に対して、即興的に和音やリズムを入れる行為を指す。

優れたコンピングは、単にコードを弾くだけではない。ソリストが息継ぎをする瞬間に合いの手を入れたり、ソリストが盛り上がろうとする瞬間に不協和音をぶつけて緊張感を高めたりと、常に主役との対話(インタープレイ)を行う。ピアニストのビル・エヴァンスやハービー・ハンコックは、リズム・セクションという枠組みの中で、ソリストと対等に渡り合う高度なコンピング技術を確立し、リズム隊を「伴奏者」から「共演者」へと昇華させた。

現代における解体と再構築

21世紀の音楽制作(DTM)において、リズム・セクションの概念は物理的な制約から解放された。ドラム、ベース、ピアノの全てを一人のトラックメイカーが打ち込みで構築することも可能であり、ヒップホップやEDMでは、サンプリングされたドラムループとシンセベースがその役割を担う。

しかし、人間が演奏するリズム・セクションが持つ「揺らぎ」や「阿吽の呼吸」の価値が失われたわけではない。むしろ、ディアンジェロやロバート・グラスパーといった現代のアーティストたちは、グリッドに縛られたデジタルビートに対抗するように、極端にレイドバック(後ノリ)した人間的なグルーヴを再評価し、新しい形のリズム・セクション像を提示している。 どれだけテクノロジーが進化しようとも、低音と打撃と和音が絡み合い、時間をデザインするというリズム・セクションの本質的な機能は、音楽が存在する限り不変のエンジンであり続けるだろう。

「リズム・セクションとは」音楽用語としての「リズム・セクション」の意味などを解説

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