リード・ギター
「リード・ギター」について、用語の意味などを解説

lead guitar(英)
リード・ギターとは、リズム・ギター(サイドギター)に対して、メロディやソロをとるギタリスト(あるいはパート)を指す。
旋律を紡ぐ「声」としての役割
リード・ギター(Lead Guitar)とは、バンドアンサンブルにおいて、主に単音(シングル・ノート)を用いて旋律(メロディ)やソロを演奏する役割、またはその担当者を指す。コードストロークやカッティングによって和声とリズムの土台を支える「リズム・ギター(サイド・ギター)」と対を成す概念であるが、その本質は単にソロを弾くことだけではない。
楽曲のイントロにおける象徴的なリフ(Riff)、歌の合間を縫うように挿入される合いの手(オブリガート/フィルイン)、そして楽曲のクライマックスで感情を爆発させるギターソロ。これらを通じて、ヴォーカリストと対等に渡り合い、時にはヴォーカル以上に雄弁に「歌う」ことこそが、リード・ギタリストに課せられた使命である。人間の声に近い中音域(ミッドレンジ)を強調した音色は、聴衆の注意を引きつけ、楽曲にストーリー性をもたらすための「第二の主役」としての機能を果たしている。
アンプリフィケーションが生んだ「英雄」の誕生
歴史的に見れば、ギターという楽器は音量が小さく、ビッグバンドの時代にはリズムセクションの一部として埋もれていた。しかし、1950年代のエレクトリック・ギターとアンプリファイアの普及が、その運命を劇的に変えた。電気的に増幅された信号は、管楽器やピアノを凌駕するサステイン(音の伸び)と音量を獲得し、ギターを「伴奏楽器」から「旋律楽器」へと昇格させたのである。
特に1960年代後半、エリック・クラプトンやジミ・ヘンドリックスらが、アンプを過大入力させることで生じる「歪み(ディストーション)」を音楽表現として確立したことは決定的であった。歪んだ音は、ヴァイオリンのような滑らかな持続音となり、チョーキング(ベンディング)やビブラートといった技術と組み合わせることで、人間の叫びや慟哭にも似た感情表現を可能にした。これにより、リード・ギタリストは単なる演奏者を超え、カリスマ性を持った「ギター・ヒーロー」としてステージの中央に立つこととなったのである。
「ツイン・リード」が描く和声の美学
通常、リード・ギターは一人であるが、バンドによっては二人のギタリストが共にリードを担当する「ツイン・リード(Twin Lead)」というスタイルを採用することもある。この手法の開拓者であるウィッシュボーン・アッシュや、それをヘヴィ・メタルへと昇華させたアイアン・メイデン、あるいはアメリカン・ロックのイーグルスなどが代表的である。
ツイン・リードの醍醐味は、単に交互にソロを弾くだけでなく、二本のギターが3度や5度の音程でハモる(ハーモナイズする)ことによって生まれる、厚みのある美しい旋律線にある。一本のギターでは表現できない重厚なオーケストレーション効果は、楽曲にドラマチックな展開と、哀愁や勇壮さといった特定の情緒(エモーション)を付加する。ここでは、個々の技巧を見せつけることよりも、二人の呼吸(インタープレイ)を合わせ、一つの巨大なメロディを作り上げることが求められる。
機材とトーン:存在感を際立たせる音響設計
アンサンブルの中でリード・ギターが埋もれずに「抜けて」聞こえるためには、適切な音作り(サウンドメイク)が不可欠である。リズム・ギターが帯域の広さをカバーするのに対し、リード・ギターは周波数帯域における「中域(800Hz〜2kHz付近)」を意図的にブーストさせることが多い。
このために、多くのギタリストは真空管アンプのボリュームを上げてサチュレーションを得たり、「オーバードライブ」や「ブースター」といったエフェクターを使用したりする。特に、アイバニーズのTube Screamerに代表されるミッドブースト系のペダルは、アンサンブルの隙間にギターの音をねじ込むための必須アイテムとなっている。また、空間系エフェクト(ディレイやリバーブ)を深くかけることで、音に広がりと余韻を与え、ソロパートにおける壮大なスケール感を演出する手法も一般的である。
現代における役割の変容と融合
21世紀の音楽シーンにおいて、リード・ギターとリズム・ギターの境界線は、かつてほど明確ではなくなりつつある。3ピースバンドのようにギタリストが一人しかいない編成では、コードバッキングの中にメロディを織り交ぜる「コードソロ」や、複音を用いたリフなど、リズムとリードをシームレスに行き来する演奏スタイルが主流となっている。
また、Neo-SoulやDjent(ジェント)といった現代的なジャンルでは、派手な速弾きソロよりも、楽曲の雰囲気を決定づけるテクスチャ(質感)としてのフレージングや、高度なリズムアプローチが重視される傾向にある。しかし、形は変われど、ギターという楽器を通じて「歌う」というリード・ギターの本質的な魂は失われていない。むしろ、テクニック至上主義から解放されたことで、より純粋に楽曲の世界観に奉仕する、洗練された表現者としての新たなリード・ギタリスト像が模索されていると言えるだろう。
「リード・ギターとは」音楽用語としての「リード・ギター」の意味などを解説
Published:2025/12/27 updated:
