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リハーサル

Posted by Arsène

「リハーサル」について、用語の意味などを解説

リハーサル

rehearsal(英)

リハーサル(rehearsal)とは、コンサートやライブ、番組収録などの本番に向けて行う練習の事。

本番のための音響の設定の確認などを行うこと。

なお、本番通りに行う通し稽古の事をゲネプロと呼ぶ。

語源に見る「再耕」の精神:練習との決定的差異

「リハーサル(Rehearsal)」という言葉は、しばしば「練習(Practice)」の同義語として混同されがちだが、音楽的な位相において両者は明確に区別されるべき概念である。語源を遡ると、古フランス語の「rehercer」に辿り着く。これは「herse(まぐわ:土を砕いて平らにする農具)」を使って「もう一度(re-)耕す」という意味を持つ。つまり、リハーサルとは、単に曲を反復練習して暗記することではなく、既に習得された個々のスキルや楽曲の理解を、集団という土壌の上で「耕し直し」、より深く、平らで、肥沃なアンサンブルへと昇華させるプロセスを指す。

「練習」が、個人が譜面を読み解き、運指を覚え、技術的な課題を克服する孤独な作業(インプット)であるとすれば、「リハーサル」は、個々が持ち寄った技術を共有し、他者との関係性の中で音を調整し、ひとつの音楽的生命体を構築する社会的な作業(アウトプット)である。プロフェッショナルの現場において、「リハーサルで練習をする」ことは許されない。個人練習はリハーサル前に完了していることが前提であり、リハーサルはあくまで「確認」と「創造」のために費やされるべき時間なのである。

構造的二元論:サウンドチェックとリハーサルの境界

実際のコンサート会場におけるリハーサルは、機能的に「サウンドチェック」と「リハーサル(音楽リハ)」の二段階に分節される。この二つを混同することは、限られた時間を浪費する最大の原因となる。

サウンドチェックは、文字通り「音響的な整合性」を確認する工学的な作業である。各楽器の入力レベル(ゲイン)の設定、イコライジングによる音質調整、そして何より重要な、演奏者が自分の音や他者の音を聴くための「モニターバランス(中音)」の構築が行われる。ここでは、エンジニアとの対話が主となり、音楽的な表現よりも、ノイズの有無や分離感といった物理的な問題解決が優先される。

対して、その後に続くリハーサルは、音楽的な流れや構成を確認する芸術的な作業である。曲間の繋ぎ(トランジション)、テンポの揺らぎ、MCを入れるタイミング、そして照明や映像との同期などが重点的にチェックされる。サウンドチェックで音質が決まっていない状態で曲の演奏を始めても意味がなく、逆にリハーサル中にアンプのつまみをいじり回して音色を変えてしまえば、サウンドチェックの時間は無に帰す。この二つの時間を明確に切り分け、意識を切り替えることが、質の高い本番を迎えるための鉄則である。

シミュレーターとしての機能:危機管理と「安全な失敗」

リハーサルのもう一つの重要な側面は、本番環境の「シミュレーション」である。ステージ上では、予期せぬトラブル(弦が切れる、スティックを落とす、モニターが聞こえなくなる)が必ず起こる。リハーサルとは、こうしたトラブルが発生した際に、いかに演奏を止めずに復旧させるかという「危機管理能力(クライシスマネジメント)」を養う場でもある。

練習スタジオでは、ミスをすれば演奏を止めてやり直すことができるが、リハーサル(特に通しリハ)では、ミスをしても絶対に止まってはならない。間違えた小節を瞬時に捨てて次の小節で合流する判断力や、誰かのミスを他のメンバーが即座にカバーする阿吽の呼吸は、この「止めないリハーサル」の中でしか培われない。本番と同じ緊張感を擬似的に作り出し、その中で「安全に失敗する」経験を積むこと。それが、ステージ上での揺るぎない自信と、想定外の事態に対する強靭な精神力を生み出すのである。

「ゲネプロ」という最終儀式

本番直前に行われる最終リハーサルは、日本ではドイツ語の「Generalprobe(ゲネラールプローベ)」に由来して「ゲネプロ(GP)」と呼ばれる。これは単なる通し稽古ではなく、衣装、ヘアメイク、照明、特効(スモークや銀テープ)、転換スタッフの動きなど、音以外の全ての要素を本番と全く同じ状態で行う総合的な予行演習である。

ゲネプロの目的は、演奏の確認以上に、ショー全体の「時間感覚(タイム感)」を身体に刻み込むことにある。セットリストの流れの中で、体力がどの程度消耗するのか、着替えに何分かかるのか、MCで観客の反応を待つ間(ま)をどう取るか。これらを物理的な身体感覚として把握することで、パフォーマーは本番中も俯瞰的な視点(メタ認知)を持つことが可能になる。ゲネプロとは、虚構の空間を現実に変えるための、最後の魔術的な儀式と言えるだろう。

非言語的コミュニケーションの醸成

優れたバンドのリハーサル風景を観察すると、驚くほど言葉が少ないことに気づく。彼らは、視線(アイコンタクト)、呼吸(ブレス)、そして身体の微細な動き(ボディランゲージ)を通じて、膨大な情報を高速でやり取りしているからである。

ドラマーがスティックを振り上げる角度で次の音量を察知し、ボーカリストが息を吸う深さで歌い出しのタイミングを共有する。こうした「テレパシー」のような非言語的コミュニケーションは、一朝一夕に身につくものではない。リハーサルという密室空間で、互いの音と存在を長時間ぶつけ合い、感覚を同調(シンクロナイズ)させる反復作業の果てに生まれるものである。この「グルーヴ」と呼ばれる目に見えない結びつきこそが、リハーサルの最大の成果物であり、観客を熱狂させるアンサンブルの正体なのである。結局のところ、本番のステージとは、リハーサルで積み上げられた氷山の、ほんの一角が水面に現れた瞬間に過ぎない。

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「リハーサルとは」音楽用語としての「リハーサル」の意味などを解説

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