音楽用語

音楽用語集 音楽用語辞典

トーン・クラスター

Posted by Arsène

「トーン・クラスター」について、用語の意味などを解説

トーン・クラスター

tone cluster(英)

トーン・クラスターとは、たくさんの音が、互いに2度以内の狭い音程関係を持ちつつ、密集したもの。密集音塊とも。20世紀音楽の手法のひとつ。

トーン・クラスターの定義と音響物理における塊状の構造特徴

トーン・クラスター(Tone cluster、音塊)は、隣り合う複数の音高(半音または全音間隔、時には微分音)を同時に発音させることによって形成される、高密度な和音構成である。伝統的な三和音のような特定の協和・不協和の秩序を超越し、個々の音符の独立性が消失して一つの「音の塊(クラスター)」として知覚される。音響物理的には、極めて狭い周波数帯域、あるいは広範な帯域に無数の不協和な倍音成分が密集するため、明確な調性感を持たないノイズに近いエネルギーの壁を作り出す構造的特徴を持つ。ピアノであれば手のひらや前腕、オーケストラであれば各奏者に異なる緊密な音程を割り当てることで、この圧倒的な音響効果が生成される。

20世紀現代音楽における歴史的展開と独自の記譜法

クラシック音楽の歴史において、トーン・クラスターは20世紀初頭のアヴァンギャルド(前衛音楽)の台頭とともに本格的に開拓された。アメリカの作曲家チャールズ・アイヴズや、ピアノの鍵盤を腕や木片で叩く奏法を理論化したヘンリー・カウエルが先駆者として知られている。さらに1960年代には、ジェルジ・リゲティやクシシュトフ・ペンデレツキらの「音響作曲法(テクスチュア・ミュージック)」によってオーケストラ表現の極致へと達した。ペンデレツキの『広島の犠牲者に捧げる哀歌』では、52台の弦楽器が互いに極めて近い音程を保持しながら激しく変調する巨大なクラスターが用いられ、人間的な叫びを物理的・精神的に表現した。従来の五線譜では表現しきれないため、特定の音域全体を黒い四角形や帯状のグラフィックで塗りつぶす「クラスター記譜法」など、視覚的にも革新的な楽譜構造が誕生した。

現代の映画音楽・ゲーム劇伴における恐怖と緊張のサウンドデザイン

現代のエンターテインメントにおける映画音楽、ホラーゲームの劇伴(BGM)、ダークアンビエントなどの領域において、トーン・クラスターは聴き手に恐怖、混沌、精神的圧迫感を与えるための最強のサウンドデザインツールとして定着している。デジタル音楽制作(DTM)の現場では、オーケストラ音源のストリングスやブラスセクションに「Cluster FX」としてあらかじめプリセットされていることが多く、ボタン一つで緊迫したテクスチャーを呼び出すことが可能である。また、シンセサイザーの音作りにおいては、複数のオシレーターのピッチをわずかにずらす(デチューン)手法や、高密度なユニゾン効果を適用することで、電子的なトーン・クラスターを構築する。ミキシングにおいては、この巨大な音響の壁が他の楽器の帯域を塗りつぶしてしまわないよう、サイドチェイン・コンプレッションやステレオイメージャーを用いて空間の左右に広げ、センターに位置するセリフや主旋律の定位を確保する高度な音響処理が施されている。

Category : 音楽用語 と
Tags :

「トーン・クラスターとは」音楽用語としての「トーン・クラスター」の意味などを解説

京都 ホームページ制作