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ワウワウ

Posted by Arsène

「ワウワウ」について、用語の意味などを解説

ワウワウ

wah wah(英)

ワウワウとは、ギターやベースに使われるエフェクター。またはエフェクターの効果。

特性を鋭くしたバンド・バス・フィルター(ある周波数帯域だけを通しやすい)のピークとなる周波数を変化させる事で、音色を変える事ができる。

ワウワウの効果を得る方法(操作方法)として、フット・ペダル(ペダル・ワウ)と、入力が加わると自動的に変化する(オート・ワウ)方法がある。フットペダルは足で操作する。

モジュレーション(Modulation)系エフェクター(宇佐丸白書)

音響工学的メカニズムと人声模倣の原理

ワウワウ(Wah-wah)という名称は、その効果音が人間の発する「ワウワウ」という声に酷似していることに由来するが、これは単なる比喩ではなく、音響工学的にも裏付けられた現象である。人間の声は、声帯の振動(基本周波数)が口腔や鼻腔の形状によって共鳴し、特定の周波数帯域(フォルマント)が強調されることで「ア」や「オ」といった母音として認識される。ワウペダルの回路は、この口腔の変化を電気的にシミュレートしていると言える。

具体的には、入力された信号に対して特定の周波数帯域のみを持ち上げる「バンドパスフィルタ」を用い、その中心周波数(ピーク周波数)をペダルの踏み込み具合によって可変させる仕組みである。ペダルを踏み込む(トゥ・ダウン)と強調される帯域が高音域へ移動し「ア」のような明るい音になり、踵側に戻す(ヒール・ダウン)と低音域へ移動し「オ」や「ウ」のようなこもった音になる。この連続的な変化が、まるで楽器が喋っているかのような有機的なニュアンスを生み出すのである。

歴史的偶然と「クライド・マッコイ」の遺産

ワウペダルの誕生は、1960年代中盤の偶然の産物であった。当時、Voxのアンプ「Super Beatle」に搭載されていたミッドレンジ・ブースト・スイッチ(MRB)の回路を、可変抵抗器(ポテンショメーター)に置き換えてテストしていた技術者たちが、その効果の面白さに気づいたことが発端とされる。

当初、この装置はエレキギター用としてではなく、管楽器のためのエフェクターとして開発された。1920年代に活躍したトランペット奏者、クライド・マッコイ(Clyde McCoy)が、ハーマンミュートを手で開閉させて「ワウワウ」という音を出していた奏法(プランジャー・ミュート奏法)を再現することを目的としており、初期の製品には彼の肖像画が描かれていたほどである。しかし、皮肉なことにこのペダルに魅了されたのは管楽器奏者ではなく、新しい表現を渇望していたロックギタリストたちであった。

ロックとファンクにおける「2つの顔」

ワウペダルは、ジャンルによって全く異なる二つの役割を果たすこととなる。 一つは、1960年代後半のサイケデリック・ロックやブルース・ロックにおける「感情の増幅装置」としての役割である。ジミ・ヘンドリックスの『Voodoo Child (Slight Return)』やクリームの『White Room』に代表されるように、リードギターのフレーズに合わせてペダルを操作し、叫びや唸りのような強烈な表現力を加える用法である。ここでは、ワウはギターを「歌わせる」ためのツールとして機能した。

もう一つは、1970年代のファンクやソウルミュージックにおける「リズムの刻印」としての役割である。アイザック・ヘイズの『Theme from Shaft』におけるチャールズ・ピッツの演奏が有名であるが、ここではコードカッティングに合わせてペダルをリズミカルに前後させ、「チャカ・ポコ」というパーカッシブなサウンドを生み出している。この用法においてワウは、ギターを打楽器的な存在へと変貌させ、楽曲のグルーヴを決定づける重要な要素となった。

機構の違いとオートワウへの進化

ペダル・ワウの心臓部には、音色のキャラクターを決定づける「インダクタ(コイル)」と呼ばれる部品が存在する。特に初期のイタリア製Voxワウに搭載されていた「Fasel(フェイセル)」製のインダクタは、その甘く歌うようなトーンから現在でも伝説的な扱いを受けており、多くのリイシューモデルで再現が試みられている。また、ポット(可変抵抗器)の代わりに光センサーを使用した「オプティカル・ワウ」も開発され、ポットの摩耗によるガリノイズの問題を解消している。

さらに、足での操作から解放されたいというニーズや、より正確なリズム追従を求めて「オート・ワウ(エンベロープ・フィルター)」も派生した。これは入力音の強弱(ピッキングの強さ)に応じてフィルターが開閉する仕組みで、スティーヴィー・ワンダーがクラビネットで使用した『Superstition』のように、鍵盤楽器やベースなど、ペダル操作が困難な楽器にもワウ効果をもたらすことを可能にした。このようにワウワウは、単なる飛び道具的なエフェクトの枠を超え、演奏者の身体動作と音色を直結させる稀有なインターフェースとして、現代音楽に不可欠な地位を確立している。

「ワウワウとは」音楽用語としての「ワウワウ」の意味などを解説

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