ナット
「ナット」について、用語の意味などを解説

nut(英)
ナットとは、ギターのヘッドとフィンガーボードとの境目にある部品。ギターの弦は一方がブリッジ及びブリッジ・サドルなどで固定されているが、もう一方は糸巻きによって巻き込まれ、このナットによって支えられている。ナットの表面には一定の間隔で6本の溝が彫られており、弦が横にずれない様になっている。
ナットの定義と弦楽器における物理的・構造的特徴
ナット(Nut、上駒)は、ギターやベース、バイオリンなどの弦楽器において、ヘッドと指板(フィンガーボード)の境界に設置される細長い部品である。音響物理的には、ブリッジ(下駒)と対になって弦の振動を支える「支点」の役割を果たす。弦の間隔を均等に保ち、指板からの適切な高さを維持することで、開放弦(指で押さえない状態の弦)の音程や鳴りを決定づける構造を持つ。ナットに刻まれた溝の幅や深さにはミリメートル単位の極めて高い精度が求められ、これが不適切であると音の詰まりやビビリ(不要な雑音)、ピッチの不安定さ、演奏性の低下を招くため、楽器全体のコンディションを左右する重要パーツである。
素材による音色の変化と歴史的・伝統的なアプローチ
弦楽器の歴史において、ナットの素材選びは開放弦の音響特性や倍音成分をコントロールするための重要な手段であった。アコースティック楽器やクラシックな弦楽器では、伝統的に密度が高く頑丈な「牛骨(ボーン)」や「象牙」が主流とされてきた。これらは有機的で温かみがありつつも、芯のあるクリアな響きをもたらす。20世紀に電気楽器が登場して以降は、大量生産に適したプラスチックのほか、1970〜80年代のハードロック期に流行した重厚なサステインを生む金属製の「ブラス(真鍮)」、摩擦抵抗を減らしてチューニングを安定させる「グラファイト」や「TUSQ(人工象牙)」など、時代や求められる音楽ジャンル、技術革新に応じて多様な素材が使い分けられてきた。
現代のポピュラー音楽におけるチューニング安定化とサウンドデザイン
現代のポップスやロック、特に激しいアーミング(トレモロアームの操作)を伴う過激なプレイスタイルにおいて、ナット部分での弦の摩擦はチューニングが狂う最大の原因となる。これを解消するために、弦を金属製のパーツで完全に固定する「ロックナット」システムや、内部にベアリングを仕込んだ「ローラーナット」などが開発され、過酷な演奏環境でも正確なピッチを維持する仕組みが確立された。また、開放弦と押弦時の音色の差をなくすために、ナットの直前に「0フレット(ゼロフレット)」を設ける設計も存在する。デジタルレコーディング(DTM)の現場においても、開放弦のサステインのムラやチョーキング時のピッチの戻りの悪さはトラック全体の濁りにつながるため、ナットの適切なメンテナンスとサウンドデザインは、高品位な音源を制作する上で不可欠な要素となっている。
「ナットとは」音楽用語としての「ナット」の意味などを解説
Published:2026/04/25 updated:
