並行
「並行」について、用語の意味などを解説

音楽における並行とは、二つの旋律が同時に鳴らされる場合において、両旋律の進行方向が一致する状態を指す。
並行進行の定義と音響構造
並行進行(パラレル・モーション)とは、多声音楽において2つ以上の声部が、互いの音程関係(度数)をほぼ一定に保ったまま、同じ方向(上行または下行)へ移動する旋律の進行様式である。これは、声部が異なる方向へ動く「反行」や、一方が留まり他方が動く「斜行」と並ぶ、アンサンブルにおける基本的な動向の一つである。並行進行は、特定の音程を連続させることで、旋律線に独特の厚みや統一感を与える音響的効果を持つ。
古典和声学における制限と連続五度・八度の禁止
伝統的な対位法や四声体和声において、すべての並行進行が無制限に許容されるわけではない。特に、完全五度や完全八度による並行進行(連続五度・連続八度)は、厳格な様式において例外なく禁止されている。
声部の独立性維持と融合の回避
完全八度(オクターブ)や完全五度は、音響物理学的に倍音上の極めて高い協和度を持つ音程である。これらの音程を保ったまま並行移動すると、2つの声部が完全に融合し、聴覚上は一つの声部が補強された(モノフォニー化した)ように認識されてしまう。多声音楽の本質である「各声部の独立性」を維持するためには、この融合を回避しなければならず、これが禁止の論理的根拠となっている。
不完全協和音程による並行の許容
一方で、三度や六度といった不完全協和音程による並行進行は、適度な独立性と調和を両立させるため、古典和声においても極めて有効な技法として多用される。ただし、これらも過度に長く連続させると楽曲の推進力が停滞するため、通常は3回ないし4回程度の連続にとどめるのが原則とされる。
近代・現代音楽およびポピュラー音楽における並行の解放
19世紀末の近代音楽の台頭にともない、古典和声の厳格な禁止規則は解体され、並行進行は新たな色彩的表現手段として再評価された。
クロード・ドビュッシーをはじめとする印象主義の作曲家たちは、伝統的な和声機能を放棄し、七の和音や九の和音をそのまま並行移動させる「並行和音(パラレル・コード)」の技法を確立した。これは、個々の声部の動きを聴かせるためではなく、和音の響きそのものを一つの音色(カラー)として扱う革新的なアプローチであった。現代のジャズやポピュラー音楽、あるいはロック音楽におけるギターのパワーコード(完全五度・八度の並行移動)の多用など、並行は現代の音響設計において、力強さや特有の浮遊感を創出するための普遍的な作曲技法として定着している。
「並行とは」音楽用語としての「並行」の意味などを解説
Published:2026/04/26 updated:
