反行
「反行」について、用語の意味などを解説

音楽における反行とは、二つの旋律が同時に鳴らされる場合において、両旋律の進行方向が異なる状態を指す。
反行の定義と2つの音楽的側面
反行(はんこう)は、音楽理論において主に2つの異なる概念を指す言葉である。一つは、和声法や対位法において「2つの声部が互いに逆の方向(一方が上行し、他方が下行する)へ動くこと(contrary motion)」である。もう一つは、楽曲の主題や旋律の音程関係を上下逆転させて新しい旋律を作る「反行形(inversion)」という作曲技法である。どちらも、音楽に変化とバランスをもたらすための重要な構造的アプローチである。
対位法・和声法における反行の効果と禁則の回避
多声部音楽(ポリフォニー)や和声の進行において、反行は各パートの独立性を際立たせるために極めて効果的である。同じ方向に動く「並行」に比べ、反行は音響的なバランスが良く、聴き手にそれぞれの旋律を明確に識別させる効果がある。また、古典的な和声学において厳しく制限されている「連続8度」や「連続5度」といった禁止された進行(禁則)を安全に回避するためにも、意図的に声部を反行させることが定石とされている。
作曲技法としての「反行形」と楽曲構造への応用
一方、主題の変形技法としての反行(インバージョン)は、バロック期のフーガやカノン、あるいは20世紀の十二音技法(セリエリズム)において中核をなす。オリジナルの旋律が「3度上がる」ものであれば反行形では「3度下がる」というように、鏡に映したように上下を反転させる。これにより、元の主題との強い有機的な結びつき(統一感)を保ちながらも、聴き手に新鮮な響きをもたらすことができる。J.S.バッハの『フーガの技法』などは、この反行形を極限まで駆使した金字塔として知られている。
「反行とは」音楽用語としての「反行」の意味などを解説
Published:2026/04/25 updated:
