オープンチューニング
「オープンチューニング」について、用語の意味などを解説

open tuning(英)
オープンチューニングとは、ギターの変則チューニングの一種。アメリカのブルース・ミュージシャンやフォーク・ミュージシャンの間では、あるキーに合わ
せた様々な種類の変則チューニングが使われ、その中で全弦の開放があるコードになっているチューニングを「オープンチューニング」と呼ぶ。
長和音であれば、オープンA、オープンD、オープンE、オープンG
短和音であれば、オープンAm、オープンDm、オープンEm、オープンGm
などがオープンチューニングの代表例である。
オープンチューニングの定義と音響物理的特徴
オープンチューニングは、楽器の開放弦をあらかじめ特定の和音(コード)を形成するように調律する技法である。音響物理的な観点において、この操作は弦同士の共鳴関係を根本から再構築するプロセスとなる。
通常の調律(レギュラーチューニング)においては異質な周波数関係にある開放弦が、オープンチューニングによって協和的なピッチ(主音や属音、第3音など)へと再配列される。これにより、一つの弦を弾いた際に他の演奏されていない開放弦が物理的に強く共振する共鳴弦効果が極限まで高まる。
結果として、楽器全体の鳴りが格段に増幅され、アコースティックな響きの中に独自の豊かな倍音スペクトルと、極めて長い自然な減衰(サスティン)が発生する。この持続的な共鳴が、演奏空間に独特の濃密な音響空間を創り出す。
西洋古典音楽における特殊調弦スカルダーチュラの系譜
クラシック音楽の歴史において、オープンチューニングと同等の思想に基づく技法はスカルダーチュラ(Scordatura)としてバロック期から存在してきた。これは、ヴァイオリンやチェロなどの弓奏弦楽器において、通常の調律(5度間隔など)を意図的に崩す技法である。
この先駆的な例として、ハインリヒ・イグナツ・フランツ・フォン・ビバーの「ロザリオのソナタ」が挙げられる。ビバーは曲ごとに調弦を細かく変更することで、通常の左手の運指では物理的に不可能な重音奏法(多声的な和音)を実現し、宗教的かつ神秘的な劇的効果をもたらした。
また、ヨハン・セバスティアン・バッハの無伴奏チェロ組曲第5番ハ短調においては、最高弦のA(ラ)の音をG(ソ)へと1音下げる指示がなされている。この変則調律により、チェロの最低音であるC(ド)に対する完全5度(G)の共鳴が最高弦でも得られ、楽曲全体に深く沈み込むような、暗く荘厳な音響テクスチュアがもたらされている。
演奏実践における弦の張力変化と楽器の音響バランス
実際の演奏実践において、調弦を通常の規格から変更することは、楽器の物理的な構造に大きな影響を与える。弦のピッチを上下させることは、表板や駒、魂柱にかかる合計テンション(張力)のバランスを変動させるため、楽器自体の発音特性や共鳴のピークが動的に変化する。
奏者は、テンションが緩んだ弦に対しては弓の速度を上げ、逆に張力が強まった弦に対しては慎重に弓圧をコントロールすることで、音色の均一性を保たなければならない。
さらに、スカルダーチュラを用いた楽譜は、実際の音高ではなく「指で押さえるべき位置」を示す記譜法(タブラチュアに近い性質)で書かれることが多い。演奏者は、目に見える楽譜の音と、実際に耳から聴こえてくる実音が異なるという解離を克服し、正確なピッチ(イントネーション)を維持するための高度な内的聴覚の制御が求められる。
現代の撥弦楽器における伝統の継承とボイシングの拡張
この変則調律の思想は、クラシックギターや現代のアコースティックギターにおけるオープンチューニング(DADGAD、オープンD、オープンGなど)へとダイレクトに受け継がされている。
現代のソロギターや室内楽の表現において、これらのチューニングは、左手の運指に過度な負荷をかけることなく、豊かな開放弦をペダルポイント(保続音)として鳴らし続けながら、高音部で複雑な旋律を展開することを容易にする。
伝統的な3和音を主体とした進行であっても、オープンチューニング特有の弦の配置により、1オクターブ以上の広い音域にまたがる広がりのあるコードボイシングや、テンションを豊富に含んだ現代的な和声感が、アコースティック楽器本来の胴共鳴を最大限に活かした形で創出される。これは、楽器の持つ物理的なポテンシャルを極限まで引き出し、独自の音楽表現を可能にする上で、今なお重要な技法として機能している。
「オープンチューニングとは」音楽用語としての「オープンチューニング」の意味などを解説
Published:2026/04/18 updated:
