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ルーディメンツ

Posted by Arsène

「ルーディメンツ」について、用語の意味などを解説

ルーディメンツ

rudiments(英)

ルーディメンツは、ドラム奏法のひとつ。

スネア・ドラムをマスターする上で非常に大切な基礎奏法。

最も広く知られているものでは、1933年にアメリカの高名なドラマーが13名が厳選した「ドラミングの主要基礎13」を基に作られた「スタンダード26アメリカン・ルーディメンツ」である。

主なルーディメンツ

主な奏法としてロング・ロール、シングル・ストローク・ロール、パラディドル、フラム、ラフなどがある。

ドラミングにおける「文法」としての定義

ルーディメンツ(Rudiments)とは、直訳すれば「基礎」「原理」「初歩」を意味する言葉であるが、打楽器奏者にとってこの用語は、単なる初心者向けの練習課題を指すものではない。それは、ピアノにおけるハノンやスケール練習がそうであるように、無限に存在するリズムの組み合わせを体系化した「語彙(ボキャブラリー)」であり、スティックコントロールを物理的に最適化するための「文法」であると言える。

あらゆるドラミングは、究極的には「右(R)」と「左(L)」の2つの動作の組み合わせに還元される。しかし、その組み合わせ方は天文学的な数に及ぶ。先人たちは、音楽的に有用であり、かつ身体工学的にも理にかなった特定の手順(スティッキング)を抽出し、それに名前を付けて整理した。これがルーディメンツの正体である。したがって、これを習得することは、単語や熟語を暗記することと同義であり、自由な即興演奏や複雑な譜面読解を行うための必須の前提条件となるのである。

戦場から生まれた信号:歴史的起源とN.A.R.D.の功績

ルーディメンツの起源は、中世ヨーロッパの軍楽隊(鼓笛隊)にまで遡る。無線通信が存在しなかった時代、戦場における部隊への命令(前進、後退、食事、就寝など)は、スネアドラム(当時はフィールドドラム)の独特なリズムパターンによって伝達されていた。これらのパターンは、大砲の轟音の中でも兵士が聞き取れるよう、明確なアクセントと手順で構成される必要があった。

アメリカにおいてこの体系化が決定的となったのは、1933年のことである。シカゴで開催されたアメリカ在郷軍人会全国大会において、ビル・ルドウィックを含む13人の著名なドラマーが集結し、「N.A.R.D.(National Association of Rudimental Drummers:全米ルーディメンタル・ドラマー協会)」を結成した。彼らは、当時地域や指導者によってバラバラであった奏法を統一すべく、「13の必須ルーディメンツ(The 13 Essential Rudiments)」を選定し、後にそれを発展させた「スタンダード・26・アメリカン・ドラム・ルーディメンツ」を制定した。これが現代ドラミングの聖典となり、今日に至るまで教育の現場で参照され続けている。

4つの基本ファミリーとその機能

ルーディメンツは多岐にわたるが、その構造から大きく4つのファミリー(系統)に分類することができる。これらを理解することは、複雑な複合ルーディメンツを解読する鍵となる。

ロール・ファミリー(Roll Family) 打楽器という減衰音しか出せない楽器において、持続音(サステイン)を擬似的に作り出すための技術群である。左右を交互に連打する「シングル・ストローク・ロール」と、1回の動作で2発叩く「ダブル・ストローク・ロール(オープン・ロール)」、そしてオーケストラで用いられる「バズ・ロール(クローズド・ロール)」が含まれる。5ストローク、7ストロークといった数字付きのロールは、特定の拍の長さを埋めるための決まり手として機能する。

ディドル・ファミリー(Diddle Family) 「ディドル」とはダブルストローク(RRまたはLL)を含む手順を指す。代表格である「パラディドル(Para-Diddle)」は、「RLRR LRLL」という手順により、アクセントの位置を変えずに左右の手を入れ替えることができる画期的な発明である。これにより、ドラマーは身体の重心移動を伴わずに、フレーズの表情を多彩に変化させることが可能となる。

フラム・ファミリー(Flam Family) 主音の直前に、逆の手で極めて小さな装飾音を加える奏法群である。「フラム」は音に厚みや太さを与える効果があり、単なる打撃音を音楽的な「音符」へと昇華させる。フラムにアクセントやパラディドルを組み合わせた「フラム・アクセント」や「フラム・タップ」、「スイス・アーミー・トリプレット」などは、マーチング特有の勇壮で跳ねるようなグルーヴの中核を成す。

ドラッグ・ファミリー(Drag Family) 主音の前に、ダブルストロークによる2つの装飾音(rrL または llR)を加える奏法群である。かつては「ラフ(Ruff)」とも呼ばれたこの技術は、音に重厚な引きずり感や粘りを与える。「ドラッグ・タップ」や「ラタマキュー(Ratamacue)」などがこれに属し、ジャズやシャッフルビートにおけるスウィング感の創出に不可欠な要素となっている。

P.A.S.による拡張と現代的応用

1984年、N.A.R.D.の26個に、オーケストラ由来の奏法やスイス式ドラミングの要素を加えた「P.A.S. 40 International Drum Rudiments」が、P.A.S.(Percussive Arts Society)によって新たに制定された。これにより、ルーディメンツの定義はより国際的かつ包括的なものへと進化した。さらに近年では、DCI(Drum Corps International)などの現代マーチングシーンにおいて、「ハイブリッド・ルーディメンツ」と呼ばれる、既存の型を複雑に組み合わせた超絶技巧的なパターン(例えば「チーズ」「フラム・ドラッグ」など)が次々と生み出されている。

しかし、ルーディメンツ習得の真の目的は、こうした複雑なパターンをスネアドラムの上で披露することだけではない。真価が問われるのは、これらをドラムセット全体に応用(オーケストレーション)した時である。例えば、パラディドルの手順をそのままに、右手でハイハット、左手でスネアを叩けば、ファンクやフュージョンにおける立体的でグルーヴィーなリズムパターンが生まれる。スティーヴ・ガッドやデイヴ・ウェックルといった名手たちは、ルーディメンツをスネアという平面から解放し、タムやシンバルを行き来する空間的なフレーズへと変換することで、ドラミングの可能性を劇的に拡張した。

ルーディメンツとは「自由になるための不自由」である。反復練習によって手順を身体の深層(筋肉の記憶)に沈殿させ、意識せずとも手が勝手に動く状態(自動化)に達した時、初めて奏者は手順という呪縛から解き放たれ、純粋な音楽表現へと没頭することが許される。

「ルーディメンツとは」音楽用語としての「ルーディメンツ」の意味などを解説

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