カッティング
「カッティング」について、用語の意味などを解説

cutting(英)
カッティングとは、ギターなどでコード・ストロークを行う時、音を短く切るテクニック。
カッティングの定義と音響物理における過渡応答の制御
カッティングは、主にギターなどの撥弦楽器において、弦の振動を左手の指の消音(ミュート)や右手の掌の接触によって意図的に制御しながらストロークを行い、発音時間を極めて短く制限する奏法である。音響物理的な観点からは、この技法は弦の自由振動によって形成される定常波を物理的に遮断し、打弦の瞬間における初期過渡応答(アタック)のみを抽出する行為であると言える。
この際、和声的な音高成分(ピッチ)は大幅に減衰し、爪やピックが弦に衝突する際の非調和的な高次倍音、すなわちノイズ成分が前面に押し出される。結果として、旋律を構築するための音高ではなく、時間軸を細分化するためのパーカッシブなインパルスが生成され、合奏におけるリズムの明瞭度を劇的に向上させる。この音響変調は、楽音と雑音の境界線を意図的に操作し、独自のダイナミクスを構築する上で極めて重要である。
西洋古典音楽における消音技法とアーティキュレーションの歴史的変遷
音の持続を物理的に遮断し、発音の長さを精密に制御することでリズムの骨格を際立たせるという思想は、西洋クラシック音楽の歴史、特に弦楽器や鍵盤楽器の演奏実践において古くから探求されてきた。
ルネサンスからバロック期にかけて活躍したバロックギターやヴィウエラの演奏においては、和音を華やかにかき鳴らす「ラスゲアード」奏法と対をなす形で、弾いた直後に右手の掌や左手の脱力によって響きを即座に止める「アパガード(消音)」と呼ばれる技法が確立されていた。これは、ポリフォニー(多声音楽)の緻密な声部配置を濁らせないため、あるいは舞曲におけるシンコペーションを強調するための極めて高度な技術であり、現代におけるカッティングの直接的な古典的ルーツである。
また、擦弦楽器であるヴァイオリン属のボウイング(運弓法)における「スピカート(跳ね弓)」や「マルトレ(叩き弓)」、あるいは指で弦を弾く「ピチカート」における消音動作も、カッティングの持つ音響的ロジックと深く共通している。古典派からロマン派にいたる管弦楽法(オーケストレーション)においても、これらの短い音を連続させるアーティキュレーションは、持続する管楽器の響きの裏でテンポの推進力を生み出し、楽曲のテクスチャーを立体的に引き締めるために多用された。音を鳴らすことと同等に、音を切る制御が、音楽の緊張感を持続させるための決定的な手段として位置づけられてきたのである。
現代アンサンブルにおけるリズム制御と音響空間の構築
20世紀半ば以降、ファンクやソウル、ジャズといった現代のポピュラー音楽において、カッティングはエレクトリックギターの表現力の中核を担うようになった。ファンク特有の16分音符を主体とした細分化されたカッティングは、ドラムのスネアやベースのゴーストノートと高度に噛み合い、緻密なグルーヴを生成する。
現代のデジタルレコーディングやミキシングの現場においては、カッティングの音響的な扱いには細心の注意が払われる。急峻なアタック成分を損なわずにアンサンブルへなじませるため、中音域(400ヘルツから800ヘルツ付近)の不要な共鳴をイコライザーで整理し、1kから3キロヘルツの高音域を際立たせることで、バンド全体の音響空間におけるギターの定位を明確にする。コンプレッサーを用いてダイナミックレンジを適度に圧縮する処理は、個々のストロークの音量差を均一にし、アコースティックな躍動感を残しながらも、極めて現代的なタイトさを持つサウンドデザインを成立させる上で重要である。
「カッティングとは」音楽用語としての「カッティング」の意味などを解説
Published:2026/04/19 updated:
